〈ただいま製作中!〉オリジナルシャツの製図と仮縫い
シャツのオーダーをいただきまして、とっても久しぶりに作っているのですが、せっかくなのでその過程をざっくりと記録&公開。
シャツとは…製作的には恐らくこの世でジャケットの次にヘビーなアイテム、です。
洋服を作るためにはまず、パターン(型紙)を作る必要があります。
要望としては「サイズMで、襟が小さめで首が詰まってない感じ。腕や肩が動きやすく」。
突然のことだったため、採寸するでもなく、ヒントは以上です。
さて、どうしよう。
オーダー主さん、随分小柄で華奢に見えますが、SじゃなくてM!とのことなので、仰せの通りMサイズにします。
とはいってもMサイズのピンポイントな世界基準があるでもなく、当然日本基準もなく、ターゲットやブランドによってまちまち(某ギャルブランドのMは他社のXSだったりする)。サイズ展開って大体『相対的』なものなので、何をもってのMとするか?これが第一の問題である。コーヒーでも、ショップによってこれでM?これがS?みたいに驚くことってありますよね。まあ、それと同じです。
他でバッグのオーダーも受けてしまっているので内心密かに超絶焦りつつ。
でも、すぐ欲しいなどスピードを求めるのならば、それに応えてくれる企業や商品はすでに世の中に沢山あるので、私みたいな個人がものを作る意味があるとしたら、それとは反対に、じっくり気長に待ってようやく完成する、そのもどかしい過程もブランドの個性にしていけたらなあなどと思うわけです。これは断じて言い訳ではなく、ポリシーです。(キリッ)
とかなんとか言ってると長くなるので進めましょう。
過去に製作販売していたアイテムのパターンを参考に、新たに引き直すことに。パターンにはいろいろな情報が書き込まれており『040505』の数字の羅列に思わず手が止まる。これは何を意味しているかと言えば、2004年5月5日、パターンの製作日です。…実に丸14年前に製作したもの。ヒトだったら中2です、中2。
すこんと晴れた青い空に、新緑の緑が揺れるのを部屋の窓から眺め、こんなに天気がいいのにもったいないかなーと言いながらこもって作業をしていた今年のGW。でも14年前のGWも、私は東京のアパートの一室でやはり青い空と近所の木々が揺れるのを眺めながら、同じようなこと言いながらパターンを引いていたんだな。と、しみじみするなど。
この製図する机の上の景色も久しぶり。奥の型紙が14年前のもの。14年前か…中2…
熱心に学んだだけあって、頭が覚えてなくても意外と手が覚えているもの。
だがしかし「製図」なので、つまり数字が命。寸法が合わなくて確認すると、単純な足し算が違っているという相次ぐケアレスミス。手が覚えていても働かない頭が足を引っ張る(圧倒的に自分のせい)。しかも、ここ10年デジタル相手ばかりしていたので、アナログ作業の手間や非効率がもどかしい。イラレだったら直角に交わる線を引くなんて2秒なのに…
袖も作ります。
さて、後ろ身頃、前身頃、袖と来て、ここから最難関である衿です。
このために実家から教本を持ってきました。めちゃ書き込んである。パターンには文化式とかドレメ式とか派閥(?)がありますが、私の師匠は企業のプロパタンナーだったので、そこの会社式だったのかな…。
概ね、紙ベースではシャツの形ができました。
とりあえず基本となる製図はここまで。ここから、仮の布で立体に組み立てるトワルというものを作ります。
その前に、気分転換に快晴のGWを満喫すべく、スーパーへ買い出しがてらご近所のバラから癒しをもらう。青い、青いぜ空。甘い、香り高いぜ薔薇。
さて、作業に戻ります。
シーチングという仮縫い用の布を先ほど作った型紙に沿ってパーツに裁断しますよ。
仮縫いとはいえ、仕上がりに近い雰囲気を見たいので、実際の縫製と同じように縫っていきます。
ここで縫製あるある。ウッカリちょっと別の考え事などをすると、気づくと違う部分同士を縫い合わせてたり…
NOooooooooooooooooooooooooooo!!!!!
今回も、やっぱりやってしまいました。よりによって、とても気を使って難しい部位をきれいに縫えた!と思ったのに。。
直後に間違いに気づき縫い糸をほどく時の敗北感は、一体何に例えたら共感してもらえるでしょうね…ドミノを完成間近で倒したとか、砂浜で車の鍵落としたとか、いい例えが思いつかないのでまた考えておきますが、とにかく、一言で表現すると『途方に暮れる』です。
そんなこんなで、心折れるトラップがそこかしこに潜んでいるのが洋服作り。
ただでさえほどくの物理的にめんどいのに、日常が“command+Z”で戻れるデジタル寄りの世界に居るだけに、ダメージがさらに大きい私。
泣いてません。これは涙ではありません。
そんなこんなで、なんだかんだで、仮縫いができました。
襟ぐり広めを狙ったとはいえ、普通のシャツとして着るにはさすがにちょっと大きいかな。
クラシカルなワンピースやアウターとかありだな。このまま丈を伸ばしてシャツワンピースにしたらかわいいな。インにタートルを合わせたいな。など妄想は膨らみますが、それはまた次のタイミングで。脱線しないでまずはまっすぐノルマを達成するのみ。
前立て〜襟台〜上襟の具合も、もっと波乱を想定していた割にはすんなり形になりました。(仮縫いだから縫い目は多少ずれてても可)
さて、これをベースに、再度襟ぐりを狭くしたパターンを製図からやり直すんだな。そうか、あの道のりをやり直すのか。オッケー!(極めて明るく…)
イラレなら襟のとこ選択して90%、エンターキー、パーン!で終わるところだなあ…と考えてしまうアドビネイティブな私。ある意味現代っ子です。
泣いてません。これは涙ではありません。
シャツ完成への道のりは遠い。